エルデーディ弦楽四重奏団 演奏会
10月17日の日曜日昼下がり、東京月島近くにある勝どき橋を渡ると、晴海トリトンスクエアがある。
晴海の再開発事業によって、住宅、商業店舗、そしてオフィスビルが立ち並ぶ中に、まん丸の円筒状の建物が見える。
ここはクラシックを主体にJAZZコンサートも開かれる音楽専用の第一生命ホール。
ホール入り口へ上るエスカレーターが、まるでUFOの中へ入っていくような斬新なデザインとなっている。
今日は、今年41回目のコンサート。
NPO法人トリトン・アーツ・ネットワークの主催する、クァルテット・ウィークエンド2010-2011“Galleria”の一つとして、エルデーディ弦楽四重奏団(Erdoedy Quartet)の演奏会に出かけた。
エルデーディ弦楽四重奏団は、1989年に東京藝術大学の出身者によって結成され、今年で20年を超えるキャリアを持つ演奏団体で、ハイドンの「エルデーディ四重奏曲」から名前をつけたらしく、この曲のCDも2枚リリースしている。
メンバーは、蒲生克郷:Vn、花崎淳生:Vn、桐山建志:Va、花崎薫:Vcで、彼らの略歴はこのページを見ていただくとわかるが、それぞれが室内楽やオーケストラの分野で活躍中の演奏会でもある。
ここ第一生命ホールは、767席のシューボックス型に近い楕円型ホールとなっており、座席の配置もゆったりしていて響きも綺麗なホールである。
弦楽四重奏ということで、小生はステージから2列目中央やや左の席を確保することができた。
今日の演目は、ロマン派の2大作曲家、シューベルト:弦楽四重奏曲第14 番ニ短調D.810「死と乙女」、休憩をはさんでシューマン:弦楽四重奏曲第3番イ長調作品41-3の2曲。
舞台中央に現われた彼らは、譜面台が重なるほどに互いが接近した着座位置で演奏する。
場合によっては弓が当たるのではと心配になるほどだが、長年カルテットを組んで息もぴったりだと見えて、チューニングから演奏開始までの一連の動作が、いかにも慣れ親しんだメンバー同士といった落ち着いたもの。
最初に演奏されたシューベルトの「死と乙女」は4楽章からなる曲だが、死を意識したシューベルトが長大で暗い雰囲気で統一されている曲に仕上げたのに対し、シューマンのそれはクララと結婚した後の一番幸せだった頃に書き上げられた幸福感に満ちた曲と、ロマン派ながら両極端の曲想である。
各楽器それぞれが1人ずつパートを受け持つ四重奏なので、演奏者個々人の力量が如実に音に現われるが、ホールの上に向かって抜けるような透明感溢れるVnの音色をVcの力強い響きが支え、それに重なるVaが音に厚みを加えて素晴しいハーモニーの響きを聴かせてくれた。
導入部の暗示的なモチーフが形を変えて何度も出てくる「死と乙女」は、途中の楽章間でチューニングをやり直すほどしっかり弾き切り、長大だが息もつかせぬ迫力ある演奏で一気に駆け抜ける。
シューマンの第3番は、うっとりするほど甘い音色でVcが幸福な気持ちを歌い上げ、VaとVcとの中低音部のハーモニー、VaとVnとの中高音部のハーモニー、そしてVn同士の高音部のハーモニーがそれぞれ交互に、また同時に織り成すことで、移ろいゆく中にも、ドイツ音楽らしく体位法に則った安定感ある音楽を作り上げていた。
演奏終了後には、万雷の拍手に応えて、アンコール曲にはメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番イ短調より第2楽章が演奏された。
いつものオーケストラの演奏会とは違い、このような弦楽四重奏団によるコンサートはプロの演奏家によるものを聴くに限る。
そう思える、充実した演奏会であった。
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