下野竜也・シューマン&ブラームス・プロジェクト第1回(芸術文化センター管弦楽団特別演奏会)
兵庫県立芸術文化センターのレジデンスオーケストラである兵庫芸術センター管弦楽団(PAC)と指揮者の下野竜也が、毎回ソリストを招いて行う特別演奏会。
その名を「下野竜也・シューマン&ブラームス・プロジェクト~シューマン交響曲&ブラームス協奏曲 全集~」といい、4回通し券が1万円で発売になっていた。
下野さんの指揮による演奏は何度か聴いたことがあるが、若手の中でも素晴らしい感動を与えてくれる指揮者の一人だと思う。
その下野さんが、今回の特別演奏会シリーズをこのように語っている。
「 ほぼ毎年の様に共演させて頂いておりますPACオーケストラと素敵なプログラムを組ませて頂く事が出来ました。
シューマンとブラームス。共に、我々に偉大な作品を遺してくれたドイツロマン派の巨匠です。そして、二人を語る上で、絶対に外せない女性の存在。クララ・シューマン。
それぞれに、それぞれの作品に、このクララとの関連が、直接、間接的にあると言われている今回演奏される作品達。
これらを集中的に取り上げる事は、とても刺激的です。
先入観に捉われない演奏が実現出来るPACオーケストラと、今、いちばん聴きたいソリスト達との共演でお送りするシューマン・ブラームスシリーズ。どうぞご期待下さい。」
そしてその演奏会のプログラムは次のようになっていた。
【第1回】2014年 3月 8日(土) 15:00
ブラームス : ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 op.15(ピアノ独奏:小山 実稚恵)
シューマン : 交響曲 第4番 ニ短調 op.120
[第2回] 2014年 4月 5日(土) 15:00
ブラームス : ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 op.83(ピアノ独奏:河村 尚子)
シューマン : 交響曲 第3番 変ホ長調「ライン」op.97
[第3回] 2014年 5月 31日(土) 15:00
ブラームス : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77(ヴァイオリン独奏:郷古 廉)
シューマン : 交響曲 第2番 ハ長調 op.61
[第4回] 2014年 6月 21日(土) 15:00
ブラームス : ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調 op.102(ヴァイオリン独奏:三浦 文彰、チェロ独奏:山上 薫)
シューマン : 交響曲 第1番 変ロ長調「春」op.38
指揮:下野 竜也、管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
こう語られては4回シリーズのチケットを買わないわけにはいかなかった(笑)
3月に入っても相変わらず寒気の到来で真冬並みの寒さの中をコンサート会場に入った。
第1回目の今日は、ピアノ独奏に小山実稚恵を迎えて、ブラームスのピアノコンチェルト第1番とシューマンの交響曲第4番が演奏された。
4回通し券の座席は毎回同じだが、前列7列目の左中央寄りの座席でソリストにも近いまあまあの席であった。
チューニングが終わり、独奏の小山さんと小柄な下野さんが登場。
上背が低い下野さん用に2段重ねされた指揮台に登っても、ピアノの陰に隠れてしまう下野さん。
演奏が始まった。
序奏の冒頭から鋭い緊張感のある演奏に引き込まれていく。
ティンパニのトレモロに重ね塗りされる油絵のように重層されていく弦楽器の響き。
低弦楽器も鈍重さとは無縁のスピードある低音を響かせてくれる。
欲をいえば、もっと楽器を鳴らしきった厚みのある響きを期待したいところだが、これがこの若いホールと若いオケの今の響きだろう。
ピアノ付きシンフォニーの趣があるブラームスのコンチェルトで、小山さんはオーケストラの一員のようにというよりもコンマスのように体を揺すって音楽と一体となる。
鍵盤を捉える度に指先が紅潮しているのが客席から見える。
40分を通しで演奏されたコンチェルトの最後まで調子を乱すこともなく、あるときは熱情的に強くあるときはロマンティックに優しくピアノとオーケストラが絡み合い重なりあう。
演奏を終えると、ややホッとした表情を見せた小山さんと、演奏を讃える下野さんの笑顔が印象的な、素晴らしいコンチェルトであった。
再三ステージに呼び出されても、期待されたアンコールはなし。
それだけ全精力を傾けた演奏だったのだろう。
休憩を挟んで演奏されたシューマンの4番。
1841年の初演時の版ではなく1854年改訂版のスコアを使った演奏だった。
予習をベルリンフィルのデジタルコンサートホールで行ったのだが、こちらは初演版だったので構成がやや異なるが、ドイツロマン派らしいキチッと構成された中にも明るい高揚した気分に満ち溢れた素晴らしい演奏。
今シーズンのPACオケは弦と管のアンサンブルが抜群に良いと評価が高かったが、この演奏なら下野さんも第1回目としては大満足だろう。
アンコールは下野さんのスピーチで和やかな雰囲気の中で、弦楽器によるシューマンのトロイメライが演奏された。
クララ・シューマンを挟んで同時代を生きたブラームスとシューマンという二人の代表的な曲を聴く、4回シリーズ。
次回も楽しみである。
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