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2020/01/19

ニ長調の絆

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毎年1月のPAC定期は、阪神淡路大震災からの復興事業としてこのホールとオケが創設された経緯もあって特別なプログラムが組まれてきた。
今年は震災から25周年そしてベートーベン生誕250周年ということで、メインはフォーレのレクイエム、口開けはベートーベンのバイオリンコンチェルトを作曲者自身の編曲によるピアノコンチェルトが演奏された。
いずれもニ長調で書かれており、苦難に打ち勝ち明るい未来の希望を予感させる曲想であるのが、共通しているのだろう。

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ゲストは、ピアノ独奏が菊池洋子、ソプラノが幸田浩子、バリトンがキュウ・ウォン・ハン、そしてゲスト・コンサートマスターがバイエルン放送交響楽団主席コンサートマスターのアントン・バラコフスキーという豪華布陣で臨まれた。

ソリストの皆さんは何度かPAC定期等に登場しているが、バラコフスキーさんがPACオケのゲストとして招かれたのは初めてではないだろうか?
この若いオーケストラメンバー達は、毎回招かれたゲストトッププレーヤー達の指導を受けて連続3回の公演に臨み、3回共に安定した演奏技量を示すというプロ演奏家としての訓練を受けながら成長していくのだが、今回のように世界のトップオーケストラで現役の主席コンサートマスターを務めているような大物が招聘に応じて指導にあたってくれるのはとても良い刺激になるのだろう。

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ベートーベンのバイオリンコンチェルト、ピアノコンチェルト版はベートーベン自身の編曲によるものだが、FM放送で聴いたことはあったが実演を聞くのは今回が初めてであった。

普段バイオリンコンチェルトとして聞き慣れた楽曲なので曲の進行は頭に入っているが、独奏楽器がバイオリンからピアノに置き換わるのに合わせた歯切れの良いオケの演奏も相まって、とても清々しく元気を貰える演奏であった。
コンサートマスターの力によるものか、弦楽器群の音の厚み、アインザッツの統一感が素晴らしく良く、バイオリンソロならそう気にならないピアノソロとのリズムの同調も良く、聴き手も安心して音楽に浸ることができた。

この曲の聞きどころは多く在るが、何と言っても1楽章最後のベートーベン自身の作曲になるカデンツァであろう。とても緻密に組み立てられた技巧的かつ雄大な世界観と、ティンパニとピアノが掛け合う斬新な試み等聞きどころ満載のカデンツァであった。

ピアニスト菊池さんのアンコール曲はリストの愛の夢。
静かで心に染み込むような秀演であった。

メインで演奏されたフォーレのレクイエムは7曲からなる第3版。
終始穏やかで気品に溢れた曲が並び、ソリストの幸田さん、バリトンのキュウさんの声質とオケやコーラスとの調和も素晴らしかった。

演奏が終わっても黙祷の様に長い静寂が続き、そして万雷の拍手。
震災に想いを馳せる特別な演奏会に会場全体が包まれた心に残る演奏会であった。

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