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2023/02/21

ハイドン・ベートーベン・シューベルト、PACオケで聴くウィーンの息吹

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兵庫芸術文化センター管弦楽団の第139回定期演奏会は、18世紀末から19世紀初めにウィーンで活躍した3人の作曲家の作品がとりあけられました。

それは、ハイドンのコンチェルトグロッソ風のニ長調第6交響曲、ベートーベンの堂々としたハ短調第3ピアノコンチェルト、シューベルトの天国的に壮大なハ長調第8(9)交響曲という、古典派からロマン派の幕開けまでを綴る小編成から徐々に編成を拡大した変化に富むプログラムでした。

指揮者は東京交響楽団の桂冠指揮者ユベール・スダーンさん、ピアノ独奏は児玉麻里さん。

スダーンさんの指揮による東京交響楽団の演奏は東京単身赴任時代にミューザ川崎シンフォニーホールの演奏会で幾度となく聞いてました。

一方、児玉麻里さんは妹が児玉桃さんであること、夫が指揮者のケント・ナガノさんであるということを知っているだけで演奏を聞くのは初めてです。

冒頭のハイドンニ長調交響曲第6番はチェンバロが入り、逆にクラリネットと金管が含まれない極小編成で、各楽器のトップ奏者が次々と独奏の技を披露する合奏協奏曲の趣があります。

なお、ティンパニが全曲通して小ぶりのバロックタイプのが使われていたのは指揮者の意図が垣間見えます。

ハイドンの交響曲はどの曲をとっても様式が整っていて聞きやすいのですが、この第6番は様々な楽器が交互に独奏を「聞かせどころ」としているので聞いていてとても楽しい曲でした。

弦楽部の独奏はそれぞれがプロオーケストラからのゲストトッププレーヤーでしたが、木管のトップはPACオケのメンバー。

それぞれが様々な演奏経験を積んで音楽家として成長するためのプログラムの一環としてこの曲の選曲理由があると思いましたが、純粋に合奏協奏曲として聞いて楽しい選曲でした。

2曲目のベートーベンピアノ協奏曲第3番の準備のため、一旦楽員が退場した後にチェンバロを運び去りスタインウェイのコンサートグランドピアノが運び込まれました。

奏者の数も増えて金管のトランペットも入ります。

ひな壇は最後列は空けたまま、その1段手前の列に左手端からバロックティンパニ、トランペット2本、クラリネット2本、ファゴット2本、そしてホルン2本が右端に並んでいます。

ベルが後ろを向いているホルンを右端に置くとステージ後方中央の壁面で音が反射することを意図しているのでしょう。

ピアノ独奏の児玉麻里さんは長身で手足が長く、指揮者のスダーンさんより背高にみえます。

演奏も骨格がしっかりしたベートーベンの世界。

強烈なアタックも力任せな粗野な音は一切させず、まるで大理石を石鎚で撃つような硬質な輝くような響きです。

それでいて細やかなトレモロなどまるで蜂鳥が羽ばたきホバリングしているかのように軽やかに聞こえます。

合奏部分からカデンツァになると一層極まり緩急自在に勇壮な世界観を繰り広げてエンディングに向かってもなお疲れを見せないタフさを感じさせてくれました。

児玉麻里さんの演奏を今回初めて聴いたのですがとても素晴らしかったです。

鳴り止まない拍手とカーテンコールに応えてアンコールにはベートーベンの佳作「エリーゼのために」を弾いてくれました。

休憩後のシューベルト交響曲第8(9)番は「ザ・グレイト」と後に名付けられたとおり、シューベルトを代表する交響曲で、生前には何故か演奏されることもなく忘れられていた楽譜を後にシューマンが発見してメンデルスゾーンの指揮で初演されたということです。

オーケストラ編成はベートーベンのピアノ協奏曲の編成のままにトロンボーンを加えた2管編成で、ステージの最上段中央の普通ならティンパニが位置する場所にトロンボーン2本とバストロンボーンの3人が並んでいます。

これもスダーンさんの意図だと解ったのは演奏が始まって間もなく。

この曲の特徴はトロンボーン、それもバストロンボーンが重要な音やリズムを加えるようになっていますが、それを最上段中央に位置させることでより明瞭に音を響かせられるよう意図された配置なのでした。

コントラバスも最低音部でリズムを取り曲を推進させていく重要な役目を担っていることを指揮者が明確に意図し、オケに指示を与えているのが判ります。

天国的に長いと言われていますが長くて退屈なことは全くなく、逆にいつまでも続いていって欲しいと思わせるこの交響曲。

50分を少し超える演奏時間でしたが全く退屈することなく堪能することができました。

演奏が終わると万雷の拍手が送られ、満足そうにそれぞれのパートを立たせていましたが、最大の拍手がバストロンボーン奏者に送られたのがこの演奏会の成功を物語っているようでした。

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2023/02/18

ファウスト&メルニコフのベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ聞き比べ

先日のFM放送では昨年5月24日にドイツのシュベチンゲン音楽祭で演奏されたイザベル・ファウストとアレキサンドル…メルニコフのデュオによるベートーヴェンVnソナタ第4番ー第5番 春、第10番が放送されたので、エアチェックしました。

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ファウスト&メルニコフのデュオは以前から沢山の演奏会や録音を行っていて、このベートーヴェンVnソナタも全曲録音のアルバムを10年程前に手に入れて聞いていました。

2人ともソロでの活動で目覚ましい活躍をしていますが、ファウストさんはモダン奏法ピリオド奏法ともに卓越した演奏を聞かせてくれますし、かたやメルニコフさんも現代ピアノから歴史的フォルテピアノまで数多くのピアノを所有し楽曲にあわせて使い分け弾きこなすことでも有名。

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そんな2人が10年前に残したモダン奏法と現代ピアノでの演奏と、昨年シュベチンゲン音楽祭で披露したピリオド奏法とフォルテピアノでの演奏ではどのような違いがあるのか?

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非常に興味を持って聞き比べすることにしました。

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演奏された3曲のうち第5番 春をアルバムとエアチェック音源と比較すると、当然ながら各楽章毎の演奏時間に差が出てきていますが、曲全体を通してみると楽章毎の時間配分には大きな差異はありません。

実際に聞き比べてみてもテンポ速度感に大きな差を感じません。

いちばん大きな違いはなんといっても奏法とピアノの違いによる響きです。

ファウストさんの演奏はピリオド奏法を取り入れながらも弦と弓はモダンなもののように感じますがメルニコフさんの弾くフォルテピアノの音色は明らかに現代ピアノとは違う柔らかなものです。

ピアノの左手の響きはやや暗めの音色ですが、ベートーヴェンがこのソナタを作曲した当時に頭の中で響いていたのはこのような響きなのでしょう。

10年前の演奏と比べると先祖返りした演奏という訳でもなく、奏法と楽器を作曲当時に近づけたことでベートーヴェンが曲に込めた想いをより身近に感じよう、という積極さが感じられます。

これは、ヘ長調の春に限らず、イ短調の第4番、ト長調の第10番でも同様。

モダン楽器をピリオド奏法で弾くVnソナタをこれだけ自在に弾きこなす奏者としてファウストさん以外にはパトリシア・コパチンスカヤさん位しか思い浮かびません。

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2023/02/11

ウィークエンドサンシャイン

久しぶりの投稿になります。

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昨年末の磁気フローティングボード導入以来、ユニコーンの鳴りっぷりが随分エネルギッシュに変化したので、従来のセッティングだと試聴していると音の塊をまともに受ける圧迫感を感じることも。

そこで、ほんの僅か左側の窓に近い方のスピーカーを後ろにトントントン、外側にトントン、、、、、、、と踵で蹴って調整を繰り返してました。

ようやく満足?したのが1月以上経った節分の頃。

ちょうど硬く強張った筋肉がストレッチで解れてしなやかになったように心地よく音楽に浸れるようになりました。

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土曜朝の楽しみは、もう数十年聞いているFM番組「ウィークエンドサンシャイン

普段あまり聞かないR&RやPOPS系の音楽をセレクトして聞かせてくれるこの番組は、DJのピーター・バラカンさんの軽妙洒脱で博識な語りと進行が素敵です。

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