音楽

2018/06/04

河村尚子ベートーベンシリーズ第1回(PAC大ホール)

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昨日日曜日のお昼過ぎに、西宮北口にある兵庫県立芸術文化センター大ホールで開催された、表題のコンサートに行ってきました。
当初は一人で行く筈でしたが、知人のH氏がチケット1枚余っているとのことで、マイミクのCさんが恩恵にあずかることになり、思わぬ形でコンサートオフ会になりました。

開場前に待ち合わせをしたところいつものように雪駄を履いたH氏が現れました。
なんと!この1週間は広島の西條の日本酒イベントにはじまり四国各地を回って関西入りしたとのことでしたが、疲れなどどこにも見えないタフぶりです。

H氏とCさんの席はH列の中程やや左寄りでちょうどピアノの鍵盤辺り、小生は一列後ろのやや右寄りでピアノの響きを正面に受ける位置です。

本日のプログラムは、これから2年越しの4回シリーズで行われるオール・ベートーヴェン・プログラム の第1回目となります。
曲目は、前半がピアノ・ソナタ 第4番 、ピアノ・ソナタ 第8番「悲愴」 。
休憩を挟んだ後半にピアノ・ソナタ 第7番 、ピアノ・ソナタ 第14番「月光」 という構成です。

ステージ中央やや前寄りにスタインウェイのコンサートグランドピアノが置かれていますが、既に調律は終えられていました。

新緑のような渋めのロングドレスをまとって河村さんがステージに現れ、演奏が始まりました。
いきなりゴツゴツした硬質の響きと早めのパッセージに度肝をぬかれました。
ベートーベンが楽譜に込めた和音の響きと音楽の構成の意図をあぶり出そうという意図でしようか?
過去何度も河村さんのリサイタルやピアノコンチェルトを聴いた印象では、河村さんは曲のイメージに応じてピアノの響きを自在にコントロールするのに長けていると見えますが、ここまで男性的なゴツゴツした響きとは。

この印象は2曲目の第8番「悲愴」でピークに達します。
とにかく早いパッセージに楽器とホールの響きの収束が追い付かないために、折角硬質な響きでベートーベンの楽譜に込められた構成をあぶり出そうとしているのに、余りに強烈なフォルテッシモの打鍵の強さでその響きが混濁してしまう場面が多々ありました。
このシリーズコンサートは既に関東で数回開催されていますがホールの大きさは千人規模と中規模の会場に対し、今回は2千人規模の大ホールですので、ホールの大きさに応じた響きの収束時間に対応できていない印象がありました。

休憩時間の感想戦でもやはり演奏が速すぎることや、叩きつけるようなタッチに話題が集まりました。
休憩時間にもピアノ調律は行われてませんでしたので、これはピアノのせいではなく河村さんの弾き方だということでしょう。

休憩が終わって後半のプログラムが始まりました。
第7番の冒頭でおや?と驚きました。
音が僅かながら柔らかい透明感のある響きに変化しています。
この曲はニ長調ですので明るさ優しさが表現されているのでしょうが、楽器とホールの響きが綺麗にシンクロしていて柔と剛の対比も見事に表現されていると感じました。
休憩時間にマネージャーなどの関係者から演奏会場での聴こえ方などのアドバイスを受けて対応したのでしょうか?
その印象は最後の第14番「月光」でも変わることはありませんでした。
冴え冴えと輝く月の光の中でモノトーンに浮かぶ広大な湖と湖畔の風景といった「月光」のイメージが隅々まで表現された演奏でした。

曲が終わると一部でスタンディングオベーションが出る程の万雷の拍手がホール内に響きました。
何度もステージに呼ばれた後に弾いたアンコールの前に河村さんからは、このベートーベンシリーズに賭ける意気込みや、出身地であるこの西宮への思い入れと、いつでも暖かく応援してくれる地元のファンや友人達への感謝などで胸が一杯な様子が見られたので、やはり前半のプログラムでは意気込み入れ込み過ぎたのかなぁ?とも思い、次回以降のシリーズも欠かさず聴きに来ようと思わずにはいられませんでした。

アンコールはドビュッシーのベルガマスク組曲から「月の光」がベートーベンの「月光」つながりで演奏されましたが、ベートーベンの冴え冴えとした月光からドビュッシーの柔らかな月の光の朧げな表現に感心しました。
曲が終わり鍵盤の上にかかげた手が降りるまで10秒近くあったでしょうか?
その静寂がまさしく「月の光」の余韻が心のうちに響く時を共有させてくれました。

終わりよければ全て良しではないですが、この静寂のひと時を皆が共有できたのが一番だと感じて演奏会場を後にしました。

まだ16時でしたが夕方には別の会に出席予定のH氏と別れ、西宮北口北側にある居酒屋でCさんとの感想戦に臨みました。
互いに病み上がりとは思えないほど盛り上がり楽しんだ感想戦、Cさんには小生が行けなくなった今週末のアルテミスSQのチケットを託してお開きとなりました。

楽しいコンサートオフ会を過ごしたHさんCさん、ありがとうございました。

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2018/04/08

郷古廉&加藤洋之ベートーベンVnソナタ・リサイタル(PAC小ホール)

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PAC小ホールで開催される室内楽のコンサートは、ステージを400名収容の客席がすり鉢状に取り囲む形式のため、奏者との距離が近くて適度な緊張感があってお気に入りのホールである。
今日はお気に入りの若手ヴァイオリニストのひとり郷古廉さんが、ベテランのピアノ奏者である加藤洋之さんとコンビを組んで、ベートーベンのVnソナタNo.4、No.6、No.7、No.8の4曲を弾く。
加藤さんはウィーンフィルの第1コンサートマスターであるライナー・キュッヒルさんと長年コンビを組んでリサイタルを行っているとのことで、今回のような若手Vn奏者との演奏会、ましてベートーベンのようにピアノとVnが対等のソナタでは、どのようにリードするのか期待していた。
今回の中でもNo.6、No.7、No.8の3曲はアレキサンダー・ソナタと呼ばれる有名曲だけに、どのように弾くのか期待していた。
郷古さんのVnは個人から貸与されている1682年製のストラド(Banato)どのクレジット。
3メートル程の至近距離で見ると、飴色のニスが色っぽい魅力的な楽器である。

演奏はやはりというか、ピアノの加藤さんが上手くリードを取って郷古さんと会話を重ねるような安定した演奏で、適度な緊張感はあるが手に汗を握るようなハラハラする場面は皆無だった。
欲を言えば郷古さんのテクニックは完璧な上にVnの鳴らし方を熟知しているようだから、もう少し加藤さんとの丁々発止のやりとりを期待したいところだが、ベートーベンを弾くにはまだまだ経験が必要というところだろう。

その証拠にアンコールで引いたシェーンベルクの幻想曲では、Vnの方がリードするように弾いていて、加藤さんはVnの出方に合わせて弾くという攻守の切り替えがとても聴きごたえのあるアンコールピースであった。

帰宅後にベートーベンVnソナタを復習したくなり、手持ちのファウスト&メルニコフによるアレキサンダー・ソナタの3曲を聴いてみた。

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2018/02/17

下野竜也指揮、三浦文彰 Vn独奏といえば

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今日はPACの第103回定期演奏会を聴きに行ってきました。
指揮は下野竜也さん、Vn独奏は三浦文彰さんです。
この2人の組み合わせは3年前に、シューマンのシンフォニー&ブラームスのコンチェルトという4回シリーズで、ブラームスのVnとVcの二重コンチェルトを弾いた時以来です。


当時新進気鋭の若手演奏家として脚光を浴びていた三浦さんは、その後着々とキャリアを積んでいるようで、使用しているVnは宗次コレクションの中から1704年製ストラドの「Viotti」を貸与されていることからも判ります。

下野さんが振る時のPACは、いつもビックリするようなパワー溢れる演奏を聴かせてくれます。
特に低弦がしっかりした厚みのある音を出して土台を固めた上にVnや管楽器が乗っかっているのです。
例えればラトルが振るBPOのような厚みのあるサウンドでしょうか。

三浦さんはブルッフのスコットランド幻想曲のVnソロを弾いたのですが、テクニックもしっかりしているし、何よりViottiから出る音楽がとても気品のあるチャーミングな優しい音色でした。
演奏が終わると万雷の拍手で何度もステージに呼び出されていましたがアンコールは無し。

後半はメンデルスゾーンのスコットランドが演奏されました。
PAC定期では以前マリナーさんが指揮した時に聴いた時にはとても快速かつ洗練された演奏だったのですが、下野さんはテンポにメリハリを付けつつも全体をやや遅めで、より重厚で粘りのあるサウンドに仕上げていました。

全ての演奏が終わり、アンコールの為にステージ脇から演奏者が入ってきた時に、下野さんが三浦さんを呼び出しました。
アンコールに演奏されたのは、何と大河ドラマ「真田丸」のテーマ曲です。
そう言えば2年前の放送時にテロップには指揮が下野さんVnが三浦さんだったのでした。
いや~生オケで聴く大河ドラマのテーマ曲もなかなか良いですね。

万雷の拍手の中で、下野さんは三浦さんを1st Vnの末席に座らせて一言。
今年の大河ドラマのテーマ曲も自分が振っているからサービスで演奏しますということで、「西郷どん」のテーマ曲を演奏して演奏会を締めくくりました。

まったくもってサービス精神に溢れた下野さんの指揮振りでしたが、PACメンバーも楽しそうに演奏しているので、ボストンポップスのような演奏会を演っても面白いのにと思いながら帰路につきました。


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2017/07/21

ベルリンフィル デジタルコンサートホールの年間視聴契約更新

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今年の秋から2017~2018年の新しいコンサートシーズンが始まるのにあわせて、我が家でもベルリンフィル デジタルコンサートホールの年間視聴契約を更新する時期が来ました。
そのタイミングでベルリンフィルかやのダイレクトメールが届き、年間視聴契約の10%割引のオファーがあったので、これ幸いに視聴契約を更新しました。

でもコレってベルリンフィルの術中にハマってますね(笑)


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2017/07/01

ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会(ザ・シンフォニーホール)

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7月に入り梅雨前線が北上して真夏日となった土曜日の昼過ぎ。
阪急中津駅から歩いて10分程、大阪グランフロント横にある梅田スカイビルにやって来た。
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今日は、ザ・シンフォニーホールで開催される、ミヒャエル・ザンデルリンク指揮、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の来日コンサート。

自宅からコンサート会場のあるザ・シンフォニーホールまでの道程を調べてみると、いつも行く西宮北口駅横の兵庫県立芸術文化センターだと駅からつながった回廊を歩いて直ぐだが、このザ・シンフォニーホールは場所が意外と不便で、グランフロントエリアが完全に再開発が終わればオフィスや商業エリアも整備され、そう遠い辺鄙な場所ではないと思うが、今はJR大阪駅、地下鉄梅田、阪急梅田、阪神梅田からだと、徒歩で15分、下手すると20分近くも歩くことになり、意外や阪急中津駅から徒歩が距離的には一番便利である。
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前回このホールに来たのは、2014年4月にマイミクのノンノンさんとコンサートに行った後は、カミさんの友人に誘われて大阪フロイデ合唱団のコンサートに出かけて以来である。
その後直ぐに色々有ったので、ここでのコンサートを意識的に避けて居たのかも知れないが、丸3年が過ぎて漸くここのコンサートチケットを購入したのだった。
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席はステージを横から見下ろす、所謂ロイヤルボックスの前列で、このホールでは平土間よりも音響的にも視覚的にも楽しめる座席である。

今日のプログラムはブラームスの交響曲第4番と第1番である。
ブラームスの1番は有名曲であり、来日公演でも多く取り上げられる曲であるが、4番の方は意外とコンサートで聴く機会が少ないと感じていた。
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偶々、先週はPACオケの定期演奏会でブラームスの4番を聴く機会があったので、若いアカデミーオーケストラの演奏と、ドイツの伝統あるドレスデンのオケとの違いを楽しみにしていた。

結論から言うと、プロ野球の2軍と1軍の違いであった。
個々の団員のテクニックの差はPAC団員が大きく劣っている訳ではないが、こと音楽性というか、音楽で聴衆を虜にする能力が格段に違うと感じた。
アンサンブルの緻密さ音色の豊かさ、色彩が遥かに豊かである。

驚いたことに前半の第4番から後半の第1番になると管楽器群が総入替えになりコンマスも交代すると、オケの音色の傾向がガラッと変わったことである。

ザンデルリンクの指揮は、知性的で抒情性に流されることもなく、かといって冷たいわけではない。
作曲家の意図を、それぞれの楽器を通じて聴衆に理解させる術を持っていると感じた。

トゥッティでもパワー全開ではなく僅かに抑制的な演奏であったが、これはホール空間がややコンパクトなこのホールに対応した為であろう。

演奏自体には大変満足したのであるが、唯一残念なのは聴衆の拍手マナーが無遠慮だったこと。
2曲ともフィナーレでタクトがまだ指揮者の頭上にあり、残響がホール内で消え入ろうとしている最中から拍手をするのは勘弁して欲しいと感じた。

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2017/05/28

ハープで聴くアランフェス協奏曲

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今日のPAC定期は、指揮者に下野竜也さん、ハープ独奏に吉野直子さんを迎えて、ロドリーゴのアランフェス協奏曲(ハープ独奏版)とブルックナー第六番でした。

アランフェス協奏曲といえばギターというのが定番ですから、今回のハープ版というのはどんな演奏になるのか、とても興味を持っていました。

吉野直子さんはロンドン生まれで6歳の頃からロスアンゼルスでハープを学び始め、ローマやイスラエルで開催されたハープコンクールでの入賞や優勝を経て世界の名だたるオーケストラに招かれている実力者です。

プログラムのインタビュー記事によれば、このアランフェス協奏曲のハープ版の楽譜を手に入れたのは1989年より少し前だそうです。

ギターの曲をハープで弾くというのは奏法が全く違うのでどんな演奏になるのだろうと思っていましたが、音量こそギターよりもやや小さいですが、両手の10本の指を総動員した演奏は優雅でそして力強く、弦から放たれる音が同心円状にホールに広がる様子が見えるようでした。

圧巻は2楽章のソロ。
ギターだとビブラートを多用した泣かせる旋律ですが、ハープは音程が弦ごとに分かれていますし基本ピチカート奏法しか使えないので、単調な演奏になるのかと思っていましたが、左右の指を総動員したトレモロが効果的で、とても素晴らしい演奏でした。

バックのオケは人数も少なめなうえやや音量を抑え気味の演奏でしたが、かえってスペインの明るくカラッとした空気を感じさせる演奏でした。

吉野直子さんのハープ演奏。
今度は小ホールでのリサイタルがあれは是非聴きたいですね。

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2017/02/05

ベルリンフィルのジルベスターコンサートをBS放送とストリーミング放映を比較視聴してみました

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小生が契約しているベルリンフィルデジタルコンサートホールはストリーミング放送でベルリンフィルのコンサートをほぼ全て視聴できるサービスです。
開始当初はSONYの大賀さんとベルリンフィルとの関係もあったのか?、PC以外のAV機器ではSONYのインターネットサービス対応TVやHDDレコーダーのみが視聴可能でした。
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その後SONYの経営危機も影響したのか、Panasonicの放送用機材の売り込みが功を奏したのか解りませんが、現在のベルリンフィルハーモニーホールに設置されている機材はPanasonicに入れ替わり、ネット配信にはIIJが関わるようになり、対応するAV機器にもPanasonic製品が追加ラインナップされるようになっています。
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ブラビアかビエラの新しいインターネットサービス対応TVであれば、ベルリンフィルデジタルコンサートホールのアイコンがプリインストールされているので、視聴契約している方なら視聴ディバイスにTVを追加するだけで、世界最高峰のオーケストラの1つであるベルリンフィルの演奏会の全てのアーカイブがいつでも視聴できるのです。
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音楽ファンにとっては数年に一度来日するプラチナチケット代金のことを考えれば、遥かに安い金額でベルリンフィルハーモニーホールでの演奏会の数々をいつでも視聴できるのですから、これは嬉しいことです。
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さて、前置きが長くなりましたが、BS録画したものとストリーミング放送を比較してみました。
BS録画はSharpのアクオスHDDレコーダーで、再生はHDMIケーブルでブラビアTVに接続して視聴ですから厳密な同条件ではありません。
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画質はBS録画の方がよりきめ細やかで、ストリーミングだと映像が大きく動くと一瞬流れるように見えますが、BSでは追随性も申し分なく奏者の髪の毛一本一本のリアルさに違いが有ります。

音声の質は、両者の音圧レベルに差があり一概に比較は出来ませんが、ストリーミングの方がコンプレッションのかけ方が強く感じ、ホールの空間をより広く感じるのはBS録画の方です。

因みに、同じNHKでも地デジだとストリーミング放送の方が音質が上回って聞こえます。

ただ、これも両者を同時に比較するからわかる程度で、ベルリンフィルデジタルコンサートホールのストリーミングの優秀さが判って、小生はかえって安心しました。
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2017/01/14

PACオケ 第94回定期演奏会(兵庫県立芸術文化センター大ホール)

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PACオケの2016年~2017年シーズンも後半に入り、今年初めての定期演奏会は芸術監督の佐渡氏の指揮、藤原真理氏のVc独奏で開かれた。
開演前に佐渡氏のプレトークがあり、熊本地震に対する募金や慰問コンサートへの感謝を、自身も熊本で被災されたという姜尚中氏の挨拶があった。
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1月の定期演奏会というのはこのPACにとっては特別なものになっていることはご存知だろうか?
そもそも阪神淡路大震災からの復興のシンボルとして建設された、大中小の3ホールを擁する芸術文化センター。
そのレジデンスオーケストラとして発足したPACオケにとり、1月の演奏会は常に震災で亡くなった多くの人々への鎮魂の想いや、生活再建や復興へと前を向いて歩む人々に対する励ましを、音楽を演奏を通して実現する場になっている。
だから芸術監督の佐渡氏はいつも1月の定期に登壇してこの想いを伝えているという。
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さて、今日の演奏曲目は、ドビュッシーの小組曲。
これはもともとピアノ曲であるが、同じくフランスの作曲家H.ビュツセルが管弦楽曲に編曲したものが演奏される。
2曲目はVc独奏に藤原真理氏を迎えたハイドンVcコンチェルト第2番。
日本人チェリストとしては、堤剛に続く斎藤秀雄門下の名チェリストとして室内楽やコンチェルトで長らく活躍してきた藤原氏がどんな演奏を聴かせてくれるのか。
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そしてメインにはベートーベンの田園交響曲である。
第5番の運命が人生に苦しみ悩み格闘する姿とすれば、第6番の田園はいかにも長閑な田園風景を表す表題音楽に例えられている。
しかし佐渡氏の解釈では、運命とほぼ同時並行的に作曲家されていたというこの田園交響曲も、ベートーベンが聴力を失った絶望の中で、明るく広々とした田園風景を描き、心の中に響く田園風景の音を描写したのだろう。
それは、まるで苦しい絶望の生活の中でもそれを微塵も感じさせないモーツァルトの後期の名曲と同様に、明るい田園風景描写の内底にあるベートーベンの苦悩と葛藤の後に達観した精神を内包している、と。

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2017/01/08

2017年初のコンサートはクレメンス・ハーゲン&河村尚子のデュオ・リサイタル

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酉年の2017年、口開けのコンサートは、兵庫県立芸術文化センター小ホールで。
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出演者はハーゲン・カルテットの創立メンバーで、ザルツブルグ・モーツァルテウム音楽院でチェロと室内楽の教鞭をとる、クレメンス・ハーゲン氏と、地元兵庫県西宮市出身で、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング芸術大学教授として後進の指導に当たっているピアニストの河村尚子氏。
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こう書くとなんだか凄い顔ぶれに見えるから不思議だ。

小ホールへの入り口は、いったん2階に上がってから、すり鉢状になった客席を降りる構造になっている。
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今日のプログラムは、先ず、シューマン:5つの民族風の小品集、続いて、ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第2番 ト短調。
休憩をはさんで、ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調というもの。

河村さんファンとしては、つい、河村さんが主でハーゲンさんが従のリサイタルだと考えがちだが、このプログラムはどちらかというと、3人の作曲家がそれぞれ贔屓にしているチェリストに献呈するために書いた曲であることがわかる。
だから、今日の主はハーゲンさんであるが、ピアノ譜の方も其々が当代きっての名ピアニストが書いただけあって技巧を凝らしたものだから、河村さんファンとしても十分楽しめるものである。

今日は、RA列2番という、最前列でステージを右横から観る座席に座った。
ピアノの座席の左前にチェロ奏者の椅子が置かれている。

ピアノには3メートル以内という至近距離だったので音響的にはどうか心配していたが、それは杞憂だった。
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2年ぶり位の久しぶりに見る河村さんは、心なしかやや細身になり身の熟しにも大人びた雰囲気を漂わせている、
ハーゲンさんはガッチリした体格であるがとても理知的な顔立ちである。

チューニングが終わり、最初のシューマン:5つの民族風の小品集から第1曲「空の空」から演奏が始まった。
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ハーゲンさんのチェロは気負いもなくとても知性的かつ暖かみのある音色であり、終始河村さんと演奏で対話をしながら演奏をリードする。

河村さんの演奏は大ホールで聴くよりも遥かに至近距離で聴いているにもかかわらず、耳障りな刺激音がないのが不思議だ。
透明感があって光輝く音色は以前よりも力強い印象を持った。

不思議なのは、シューマンの次に演奏されたベートーベン:チェロ・ソナタを弾いた時には、音色に重厚さが加わったことだ。
これは音楽の構造により合ったピアノの響きが自ずと出てきているのだろう。

それに比べるとチェロという楽器自体は重音による響きの違いだけなので、ハーゲンさんはボウイングで曲のニュアンスを弾き分けているから、ベートーベンでは2回も弓の毛が切れるのが見て取れた。

丁々発止で音楽が絡み合い紡がれていく様を聴いていると体がほてってくるのがわかる。
オーケストラをバックにピアノコンチェルトを演奏する河村さんよりも、このような室内楽を演奏する河村さんの方が、より深い感動を与えてくれる気がする。

休憩時間に水を一杯飲んで火照った身体を冷ましてから始まった、ラフマニノフ:チェロ・ソナタが圧巻だった。
甘く甘美な響きとドラマ性を併せ持つこの4楽章形式の曲を聴くと、大編成のオーケストラ以外にも、この作曲家の才能が余すことなく発揮された名曲だと感銘を受けた。

アンコール曲にはフランク:チェロ・ソナタ イ長調より第1楽章 アレグレット・ベン・モデラートが演奏されたが、一転してフランスらしいエスプリに溢れた演奏も素晴らしい。

こうして4人の作曲家の演奏を聴いて感じたのは、この2人が作曲家の意図を汲み上げ演奏で表現する力量の高さであり、土着的な匂いを微塵も感じさせない都会的で洗練された演奏である。

2人とも音楽大学で教鞭をとるという共通項があるにしても、独奏者としてのキャリアよりも室内楽奏者としてのキャリアの深さがそうさせているのだろうか。
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この2人の組み合わせではいずれもライブ録音で、2013年10月プラハでチェコ・フィルとの共演で、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、に、2014年5月のドイツでの演奏にカップリングする形で、ラフマニノフ:チェロ・ソナタの録音があるだけであるが、他の曲も是非録音してほしいものである。

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2016/07/18

2台のShigeru-Kawai SK-EXを聴いて

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7月に、兵庫県立芸術文化センターの大ホールと小ホールで、違う演奏家であるが、日本のピアノメーカーカワイのコンサート・グランド・ピアノ Shigeru-Kawai SK-EXを聴く機会があったので、そこで感じた印象を日記に残すことにした。

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7月2日の兵庫県立芸術文化センター大ホールで、ミハイル・プレトニョフのピアノ・リサイタル。
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7月16日の兵庫県立文化センター小ホールで、アレクサンデル・ガジェヴのピアノ・リサイタル。

きっかけは、GRFさんから現代最高のピアニストの一人であり、ロシア・ピアニズムの継承者として、是非聴いていただきたいというやり取りからであった。
また、近年はピアニストの活動を休止して指揮者として活躍していたが、KAWAIのピアノに出会ってからピアニストとしても活動を再開したという話にも興味が沸いていた。

世界の名だたるピアニストは、ほぼ例外なくスタインウエイを弾く。
稀にピアノコンクールで、YAMAHAやKAWAIが選ばれることはあっても、スタインウエイが絶大な支持を受けている事実があり、演奏会はもちろんのこと、録音メディアにおいてもピアノの音すなわちスタインウエイの音である。

さて、今回リサイタルが開かれた兵庫県立文化センターには2000人収容の大ホールと400人収容の小ホールがある。
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大ホールは、オペラやバレエ公演にも対応したピット付きの大空間と、無垢の木材を多用した音響も素晴らしい。

小ホールは、ステージを取り囲むすり鉢状のアリーナ形式が特徴で、ステージの奏者がとても近くに感じられる。

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